M&Aは成長戦略だが、万能ではない

企業が短期間で成長する方法の一つにM&Aがあります。
自社でゼロから事業を育てるよりも、すでに技術・人材・顧客を持つ会社を買収することで、一気に事業規模を広げることができます。

いわばM&Aは「時間を買う」戦略です。

ニデックも、創業者である永守重信氏のもとで積極的なM&Aを進め、会社を大きく成長させてきました。かつては、買収した企業を立て直す手腕も高く評価されていました。

しかし今回の記事を読むと、M&Aには大きなワナがあることが分かります。

それは、会社は買えても、買った後にきちんと経営できるとは限らないということです。

買収後の管理ができないと、不正の温床になる

ニデックでは、会計不正に続き品質不正も問題になっています。
記事では、その背景にM&Aでグループ会社が増えすぎ、企業集団が複雑になったことがあると指摘されています。

買収先の会社が増えるほど、経営トップの目は現場に届きにくくなります。
さらに、収益や株価へのプレッシャーが強くなると、現場には「何とか数字を作らなければいけない」という空気が生まれます。

この状態はかなり危険です。

本来、M&Aで大切なのは買収した瞬間ではなく、その後の統合です。
企業文化を理解し、現場の実態を把握し、内部統制を整える。
この地味な作業ができなければ、買収は成長ではなく、リスクの積み上げになってしまいます。

個人投資家は「M&A連発企業」をどう見るべきか

個人投資家としては、M&Aを積極的に行う企業を見るとき、売上や利益の伸びだけで判断してはいけないと感じます。

買収によって売上が増えるのは、ある意味では当然です。
大事なのは、その会社が買収先をきちんと管理できているかどうかです。

たとえば、以下のような点は見ておきたいところです。

・買収後に利益率は改善しているか
・のれんや減損リスクは大きすぎないか
・グループ会社が増えすぎて管理不能になっていないか
・不正や品質問題が起きていないか
・経営者が買収の目的を具体的に説明しているか

特に「とにかく買収して成長しています」という企業は、見た目の成長が派手な分、裏側の管理体制を確認する必要があります。

ロングゲームでは“成長の質”を見る

投資は短期の株価だけを見るゲームではありません。
長く付き合うなら、その企業が持続的に成長できるかを見る必要があります。

M&Aで一気に大きくなる会社は魅力的です。
でも、買収後の現場を見ずに、数字だけを追いかける経営になれば、いつかひずみが出ます。

今回のニデックの記事から学べるのは、成長のスピードよりも、成長の質を見ることの大切さです。

僕自身、ロングゲームで投資を考えるなら、派手なM&Aストーリーよりも、買った会社を丁寧に育てられる企業を選びたいです。

M&Aは悪ではありません。
ただし、買って終わりではなく、買ってからが本番です。

個人投資家としては、企業の成長物語にワクワクしつつも、その裏側にある管理力・統合力・現場を見る冷静さを忘れないようにしたいですね。