ドコモの土地売却は「守り」だけではない

NTTドコモが東京都内のオフィスビル2棟の土地を約600億円で売却した。表面的に見ると「携帯事業が苦しいから資産を売ったのか」と感じるかもしれない。実際、ドコモは2026年3月期に営業収益は過去最高だった一方、営業利益は前年から減少しており、コンシューマ通信事業の利益も大きく落ち込んでいる。通信品質改善や販売促進への投資が重荷になっている状況だ。 

ただ、長期目線で見ると、この土地売却は単なる資金繰りではなく、資産の持ち方を変える戦略と考えられる。ドコモは2026年5月に「2025年度決算および2026年度業績予想」の説明資料を公表しており、今まさに通信品質の立て直しと次の成長投資が重要な局面にある。 

アセットライト経営とは何か

今回のキーワードは「アセットライト」だ。これは、自社で土地や建物などの重い資産を抱えすぎず、必要な資金を成長分野へ回す考え方である。

通信会社にとって本当に重要なのは、都心の土地を持ち続けることではなく、つながりやすい通信網、5G基地局、法人向けサービス、金融・決済・データ活用などの競争力を高めることだ。ドコモは以前からドコモタワーなどを含む首都圏不動産の売却検討が報じられており、今回の土地売却もその流れの一部と見てよさそうだ。 

長期目線では「現金化」より「再投資先」が大事

個人投資家として見るなら、今回の売却そのものよりも、売却で得た資金を何に使うのかが重要だ。

もし単に利益の穴埋めで終わるなら、長期的な評価はあまり高くない。しかし、通信品質の改善、5G・6Gへの投資、法人向けDX、金融・決済サービスの強化に使われるなら、これは未来の収益源を作るための前向きな一手になる。

ドコモはネットワーク品質への不満から顧客基盤の立て直しが課題になっており、販促強化とネットワーク強靭化に資源を集中していると報じられている。短期的には利益を圧迫するが、通信会社にとって「つながる安心」はブランドの土台だ。ここを立て直せなければ、いくら料金プランやポイント経済圏を強化しても長期戦では弱い。 

よっしー的に見ると「家計改善」にも似ている

今回のドコモの動きは、家計で言えば「使っていない資産を見直して、将来必要なところにお金を回す」ようなものだと思う。

たとえば、家を買うときも、ただ広い家を持てばいいわけではない。固定費、修繕費、教育費、投資資金まで考えて、長く続けられる形に整える必要がある。企業も同じで、持っているだけで安心する資産より、将来の収益を生む投資にお金を回す方が大事になる。

ドコモの土地売却は、短期的には「苦戦の表れ」に見える。しかし長期的には、重たい資産を軽くして、本業と成長領域に集中する動きとも言える。まさに企業版の固定費見直しだ。

個人投資家が見るべきポイント

今後見るべきポイントは3つある。

1つ目は、通信品質が本当に改善するか。
2つ目は、売却資金が成長投資につながるか。
3つ目は、携帯事業以外の収益源が育つか。

不動産を売ること自体はゴールではない。大事なのは、そのお金で会社の体質が強くなるかどうかだ。

まとめ

NTTドコモの土地売却は、短期的には業績苦戦への対応に見える。しかし長期目線では、土地を抱える会社から、通信・データ・金融・法人サービスへ資本を集中する会社へ変わるための一手とも考えられる。

個人投資家としては、「資産を売ったから危ない」と決めつけるより、売った後に何へ投資するのかを見るべきだ。企業も個人も、長く生き残るためには、持ち物を増やすより、必要なところに資源を集中する力が大事になる。ドコモの今回の動きは、その意味でかなり長期戦向きの判断だと思う。