東京証券取引所で、上場廃止となる企業が増えています。

2026年中の上場廃止が確定した企業は、9月4日時点で128社。すでに2025年通年の125社を上回り、3年連続で過去最多を更新する見通しです。

「上場廃止」と聞くと、経営不振や倒産をイメージする人も多いかもしれません。

しかし、今回増えている上場廃止は、必ずしも悪い話ばかりではありません。むしろ企業が成長するために、あえて株式市場から離れるケースも増えています。

上場廃止には大きく2つのパターンがある

現在増えている上場廃止は、大きく2つに分けられます。

1つ目は、上場維持基準を満たせなくなった企業です。

東京証券取引所は2022年4月に市場区分を再編し、プライム・スタンダード・グロースの3市場に変更しました。同時に、時価総額や流通株式などの上場維持基準も見直されています。

これまで経過措置によって上場を続けてきた企業の中には、期限までに基準を達成できず、上場廃止になる企業もあります。

東証としては、単に上場企業の数を増やすのではなく、成長意欲や企業価値を高める力のある企業を残したいのでしょう。

2つ目は、企業が自ら上場廃止を選ぶケースです。

投資ファンドなどの資金を活用して株式を買い取り、非公開企業になる動きが増えています。2026年に非公開化する企業のうち、約2割にあたる28社が投資ファンドの支援を受けました。

なぜ、あえて上場をやめるのか

企業が上場していると、多くの株主から継続的に業績を評価されます。

当然、売上や利益が伸びなければ株価は下がります。そのため経営陣は、どうしても四半期や1年単位の業績を意識しなければなりません。

しかし、新規事業やAIなどの成長分野へ本格的に投資する場合、すぐに利益が出るとは限りません。一時的に費用が増え、業績が悪化する可能性もあります。

そこで上場をやめて株主構成を整理し、短期的な株価に左右されず、長期的な視点で経営改革を進めようとする企業が増えているのです。

記事では、ネット印刷のラクスルがゴールドマン・サックスの支援を受けてMBOを進めた事例が紹介されています。

また、2024年6月に東証グロース市場へ上場した豆蔵も、わずかな期間で非公開化を選びました。業績不振が理由ではなく、AI分野へ大胆に投資するための判断です。

これを見ると、現在は「上場すること」よりも、「どのような環境なら成長できるのか」を重視する時代になったと感じます。

上場企業数は7年ぶりの低水準

東京プロマーケットを除く上場企業数は、2025年末の3,782社から、2026年8月末には3,705社へ減少しました。

ピークだった2023年末と比べると約4%少なく、7年ぶりの低水準です。

IPOについても、2026年1~8月は22社にとどまり、前年同期を下回りました。

一方、東証の基準を満たすことが難しい企業の中には、名古屋・福岡・札幌の証券取引所へ移るケースもあります。

地方取引所への新規上場は2020年の3社から、2025年には47社まで増えました。企業にとって、東証だけが唯一の選択肢ではなくなりつつあります。

個人投資家にとって上場廃止はチャンスかリスクか

個人投資家にとって、上場廃止にはチャンスとリスクの両方があります。

MBOや投資ファンドによる買収の場合、市場価格より高い価格で株式の買い付けが行われることがあります。発表後に株価が上昇し、投資家が利益を得られる可能性もあります。

一方、業績不振や上場維持基準の未達による上場廃止の場合は注意が必要です。

売買できる期間が限られ、株価が大きく下落する可能性があります。上場廃止後も株主であることに変わりはありませんが、証券取引所で簡単に売買できなくなってしまいます。

今後、小型株や新興企業へ投資するときは、業績だけでなく、次の点も確認する必要がありそうです。

  • 時価総額や流通株式の規模
  • 上場維持基準を満たしているか
  • 上場維持に向けた改善計画
  • 大株主や投資ファンドの動き
  • MBOやTOBの可能性
  • 株価を意識した経営を行っているか

特にグロース市場では、将来への期待だけでなく、実際に成長を続けられているかを見ることが重要になるでしょう。

上場企業が減ることは悪いことなのか

私は、上場企業数が減ること自体は、必ずしも悪いことではないと考えています。

これまでは、上場することが企業にとって大きなゴールのように見られていました。しかし、本来は上場した後に事業を成長させ、企業価値を高めていくことが重要です。

成長が止まった企業が市場に残り続けるより、経営改革を進めたり、自らに合った市場へ移ったりする方が健全なのかもしれません。

一方で、株主の立場から考えると、経営陣や大株主の都合だけで非公開化が進められないか、買い付け価格が妥当なのかという点には注意が必要です。

まとめ

上場廃止が過去最多を更新している背景には、東証による市場改革と、企業が自ら非公開化を選ぶ動きがあります。

つまり、今回のニュースは「経営不振の会社が急増している」という単純な話ではありません。

日本の株式市場が、上場企業の数を重視する市場から、企業の成長力や質を重視する市場へ変わっているということです。

個人投資家としても、「上場しているから安心」と考えるのではなく、その企業が上場を続けられるだけの規模や成長力を持っているのかを見極める必要があります。

今後は企業の決算だけでなく、上場維持基準や株主構成、MBO・TOBの動きにも注目していきたいと思います。