2026年8月28日の外国為替市場で円安・ドル高が急速に進み、円相場は一時1ドル=160円台前半まで下落しました。

7月末には、日本と米国が協調して円買い・ドル売り介入に踏み切ったばかりです。一時は155円台まで円高が進みましたが、それから1カ月もたたないうちに再び160円台へ戻りました。

過去最大規模となる15兆円超の介入を実施しても、なぜ円安を止められなかったのでしょうか。

15兆円規模の介入効果が急速に薄れる

日本の財務省が公表したデータによると、7月30日から8月26日までの為替介入額は15兆4,000億円に達しました。この期間には、7月末の日米協調介入も含まれています。

ただし、現時点では日ごとの詳細な金額が公表されていないため、15兆4,000億円のすべてが日米協調介入に使われたわけではありません。それでも、日本政府が円安を食い止めるために異例の規模で市場に介入したことは確かです。

介入直前には1ドル=164円近くまで円安が進んでいましたが、介入後は一時155円台まで円高に振れました。しかし、その後は再び円売りが優勢となり、8月28日には160円台へ逆戻りしています。

介入前の164円台まで完全に戻ったわけではないものの、介入による円高効果が急速に薄れていることは明らかです。

円安の引き金はウォーシュFRB議長の発言

今回の円安を加速させたのが、米ワイオミング州で開催されたジャクソンホール会議です。

ウォーシュFRB議長は講演で、米国経済について雇用は安定し、景気も底堅いとの認識を示しました。一方、FRBが重視するPCE物価指数は目標の2%を上回っており、「現在は物価に重点を置くべきだ」と強調しました。

さらに、基調的なインフレが明確かつ十分な速度で2%へ向かわなければ、FRBにはまだやるべきことがあるとの考えを示しています。

ウォーシュ議長が9月の利上げを明言したわけではありません。しかし、市場では発言が金融引き締めに前向きな「タカ派」と受け止められ、米国の金利上昇を意識したドル買いが広がりました。その結果、ドル円は160円台まで上昇したのです。

なぜ為替介入だけでは円安を止められないのか

今回の動きから分かるのは、為替介入だけで相場の大きな流れを変えるのは難しいということです。

円安の根本には、日本と米国の金利差があります。米国ではインフレが根強く、追加利上げの可能性が意識されています。一方、日本銀行は利上げに慎重な姿勢を続けてきました。

米国の金利が高く、日本の金利が低ければ、投資家は金利の高いドルを買い、金利の低い円を売りやすくなります。この構造が変わらないまま政府が円を買っても、介入による円高は一時的になりやすいのです。

つまり、為替介入は円安の流れを止める「時間稼ぎ」にはなっても、日米金利差という原因そのものを解消する政策ではありません。

今後の注目は米雇用統計と9月の日銀会合

今後のドル円を考えるうえで、特に注目したいのは次の3点です。

1. 米国の雇用統計や物価指標

2. FRBが追加利上げに踏み切るか

3. 9月の日銀金融政策決定会合で追加利上げがあるか

米国の雇用や物価が強ければ、FRBの利上げ観測が一段と高まり、ドル高・円安が進む可能性があります。反対に、日銀が追加利上げに動けば日米金利差の縮小が意識され、円高方向への材料になります。

また、160円台は日本政府が再介入を検討する可能性が意識されやすい水準です。今後は「米国の利上げ」「日銀の利上げ」「再介入」という複数の材料がぶつかり、値動きがさらに荒くなることも考えられます。

まとめ|160円台では円安追随よりリスク管理を優先したい

15兆円を超える大規模な為替介入でも、円相場は1カ月足らずで再び160円台へ戻りました。今回の動きは、政府による介入だけでは、日米金利差を背景とした円安の流れを簡単には変えられないことを示しています。

私自身もドル円を見ていますが、160円台では円安の勢いだけを見てドルを買うのは怖いと感じます。FRBの利上げ観測で上昇する可能性がある一方、日銀の追加利上げや政府の再介入があれば、短時間で大きく円高へ振れる可能性もあるからです。

今は方向を決めつけるより、ポジションを小さくする、損切り水準を事前に決める、重要指標の前には取引を控えるといったリスク管理を優先したい局面です。

160円台に戻ったからといって、円安が一方向に続くとは限りません。米国の経済指標と日米の金融政策を確認しながら、冷静に相場と向き合う必要がありそうです。

参考資料

● Federal Reserve Board「Keynote remarks by Chairman Warsh at the 2026 Jackson Hole Economic Policy Symposium」(2026年8月28日)

● Reuters「Japan spent record $96.5 billion to support yen over past month, ministry data shows」(2026年8月28日)

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。