「少しでも偏差値の高い大学へ行けば、将来の選択肢が広がる」

これまでの日本では、そんな考え方が当たり前のように受け入れられてきました。しかし、少子化が急速に進むこれからの時代は、大学選びの基準そのものが大きく変わるかもしれません。

文部科学省の推計によると、2025年に約65万人いる大学進学者は、2050年には約42万人まで減少する見通しです。

現在の大学の定員が大きく変わらなければ、2050年には大学進学者の約2人に1人が、国公立大学や現在「難関」とされている私立大学に入学できる計算になります。

偏差値の高い大学に入ること自体が、今ほど特別ではなくなる可能性があるのです。

少子化で「大学が学生を選ぶ時代」から変わる

これまでの大学入試は、多くの受験生の中から大学側が学生を選ぶ仕組みでした。

しかし、18歳人口が減っていけば、今後は大学側が「選ばれるための努力」をしなければなりません。

すでに有力大学では、中学校や高校を系列校に加え、早い段階から優秀な学生を確保しようとする動きが始まっています。

法政大学は東京家政学院中学校・高校を系列校とし、明治大学も日本学園中学校・高校を付属校として再スタートさせました。

立命館は広域通信制高校の新設を構想し、探究学習を重視した一貫教育を目指しています。大正大学では、高校生が大学の授業や地域活動に参加できる取り組みも進められています。

今後は大学名だけでなく、

・どのような教育を受けられるのか
・どんな研究や経験ができるのか
・卒業後にどのような力が身につくのか

といった大学独自の価値が、今まで以上に問われることになりそうです。

大学も「入学後にどれだけ成長したか」で評価される

文部科学省は、偏差値とは異なる大学の評価基準を導入しようとしています。

学生の成長度や教育への満足度などを学部ごとに評価し、「三つ星」「二つ星」「一つ星」「要改善」の4段階で示す仕組みを、2030年にも始めたい考えです。

これは、とても大きな変化だと思います。

これまで大学は、入学時の偏差値によって評価されることが中心でした。しかし、本当に大切なのは「どれだけ難しい大学に入ったか」ではなく、「大学に入ってから何を学び、どれだけ成長したか」ではないでしょうか。

入口ではなく、出口が評価される時代への転換です。

一方で、すべての大学が生き残れるわけではありません。

18歳人口の減少によって、資金不足に陥るリスクが高い私立大学は、2040年度に約260校まで増えると試算されています。現在の約5倍です。

これから大学を選ぶ際には、偏差値や知名度だけでなく、教育内容や卒業後の進路、大学の経営状況まで確認する必要が出てくるでしょう。

AI時代は「どこの大学を出たか」だけでは通用しない

企業の採用方法も変わりつつあります。

総合型選抜や学校推薦型選抜で大学に入る学生が増え、一般入試の偏差値だけでは、その人の能力や経験を判断しにくくなっているからです。

さらに、AIの普及によって仕事の内容も大きく変わります。

大学を卒業しただけで将来が安泰という時代ではありません。大学や大学院で何を学んだのか、社会人になってどのような経験を積んだのかが、より重視されるようになるでしょう。

一度身につけた知識だけで40年以上の社会人生活を乗り切るのは難しくなります。働きながら学び直す「リスキリング」も、特別なことではなくなるはずです。

また、大学進学率は将来も6割程度で頭打ちになると予想されています。残りの4割の人たちが大学に進学しなくても、働きながら成長し、再挑戦できる仕組みを整えることも重要です。

4歳と1歳の子どもを育てる親として思うこと

私には現在、4歳と1歳の子どもがいます。

まだ大学進学は遠い未来の話ですが、子どもたちが進路を考える頃には、今とは大学の価値も就職の仕組みも大きく変わっているでしょう。

親としては、どうしても「できるだけ偏差値の高い学校に行ってほしい」「安定した会社に入ってほしい」と考えてしまいます。

しかし、今の常識をそのまま子どもに押しつけることが、正解とは限りません。

これから必要なのは、正解を覚える力だけではなく、自分で問いを立て、考え、周囲と協力しながら答えを探す力です。

AIを使いこなす力や、自分の考えを相手に伝える力、失敗しても学び直して挑戦する力も重要になるでしょう。

そのためには、子どもに「どこの大学に入りたいの?」と聞くだけではなく、

「そこで何を学びたいの?」
「将来、何をやってみたいの?」
「どんなことをしているときが楽しい?」

と問いかけることが大切なのだと思います。

偏差値が消えるのではなく、評価の物差しが増える

2050年になっても、偏差値が完全になくなるわけではないでしょう。大学を比較する分かりやすい指標として、一定の影響力は残るはずです。

ただし、偏差値だけで人や大学の価値が決まる時代は、少しずつ終わっていくのではないでしょうか。

大学名という看板よりも、そこで何を学び、どのように成長し、その後の人生にどう生かしたかが大切になる。

これは、子どもたちにとって決して悪い変化ではありません。

親にできることは、将来の正解を先回りして決めることではなく、子どもが自分なりの道を選べるように、さまざまな経験と学ぶ機会を用意することです。

子どもたちが進学する頃、大学はどのように変わっているのでしょうか。

今の偏差値や大学ブランドだけにとらわれず、変化する時代を見ながら、親自身も教育に対する考え方をアップデートしていきたいと思います。