企業年金の運用環境が改善してきています。

日経新聞でも、生命保険会社が運用を受託する確定給付企業年金(DB年金)の利回りが2025年度に平均1.7%台まで上昇し、約10年ぶりの高水準になったと報じられていました。

背景にあるのは、金利上昇です。

これまで日本は長い間、超低金利の時代が続いていました。銀行預金も増えない。債券の利回りも低い。企業年金を運用する側にとっても、なかなか利益を出しにくい環境でした。

しかし、金利が上がることで、国債などの利息収入が増え、企業年金の運用成績も改善してきました。

例えば日経の記事では、ある企業年金基金がこれまで予定利率を下回っていた運用成績を、金利上昇によって上回るようになり、将来の給付改善を検討できる余地が出てきたと紹介されていました。

ここだけ聞くと、

「じゃあ会社員の老後は少し安心なのでは?」

と思うかもしれません。

ただ、話はそんなに単純ではありません。

企業年金が増える余地は出てきた

企業年金には大きく分けて、DBとDCがあります。

DBは、会社側が将来の給付額をある程度約束する制度です。
一方で、DCは自分で運用し、その結果によって将来受け取れる金額が変わる制度です。

今回注目されているのは、主にDB年金です。

運用利回りが予定利率を上回ると、年金基金の財政に余裕が出ます。すると、将来的に給付額を増やせる可能性があります。

会社員にとって企業年金は、普段の給料明細ではあまり意識しにくい存在です。

でも実は、会社が裏側で用意してくれている「見えにくい老後資産」とも言えます。

つまり、今回のニュースは、

「給料だけではなく、会社員の退職後資産にも金利上昇の影響が出始めている」

ということです。

これはかなり地味ですが、会社員にとっては大事な変化です。

でも物価上昇にはまだ追いついていない

ただし、ここで安心しすぎるのは危険です。

企業年金の利回りが改善したとはいえ、平均利回りは1.7%台です。

一方で、物価上昇率は3%前後の水準が続いています。

つまり、運用成績は良くなっているけれど、物価上昇にはまだ負けている状態です。

これはかなり重要です。

仮に将来もらえる企業年金や退職金が少し増えたとしても、食費、光熱費、住宅費、教育費、医療費などがそれ以上に上がっていけば、実質的な生活の余裕は増えません。

お金は「金額」だけで見てはいけません。

大事なのは、そのお金でどれだけ生活できるかです。

昔の100万円と、今の100万円では価値が違います。

老後資金も同じです。

退職金がある。企業年金がある。だから大丈夫。

そう考えていると、物価上昇によってじわじわ生活が苦しくなる可能性があります。

会社員の資産形成は「4本柱」で考える

これからの会社員は、老後資産を1つの制度だけに頼るのではなく、複数の柱で考える必要があります。

具体的には、

・退職金
・企業年金
・NISA
・iDeCo、または企業型DC

この4つをセットで見ることが大事です。

退職金や企業年金は、会社が用意してくれる部分です。
NISAやiDeCo、企業型DCは、自分で準備する部分です。

会社が用意してくれる制度はありがたいですが、それだけで老後が安泰とは限りません。

特に今後は、物価上昇、金利上昇、社会保険料の負担増、住宅ローン、教育費など、家計に影響する要素がどんどん増えていきます。

だからこそ、会社員ほど「自分の老後資産がどこにあるのか」を把握しておく必要があります。

まず確認すべきこと

まずやるべきことはシンプルです。

自分の会社に、どんな退職給付制度があるのか確認することです。

退職金制度はあるのか。
企業年金はDBなのか、DCなのか。
企業型DCがあるなら、毎月いくら拠出されているのか。
自分で上乗せできるマッチング拠出はあるのか。

このあたりを知らないまま資産形成を考えるのは、少しもったいないです。

なぜなら、会社員の資産形成は、毎月の手取りだけで決まるわけではないからです。

給料、賞与、退職金、企業年金、持株会、NISA、iDeCo。

これらを全部合わせて、はじめて自分の本当の資産形成が見えてきます。

企業年金に期待しすぎず、自分でも備える

今回のニュースからわかることは、企業年金の環境が少し良くなってきたということです。

これは会社員にとってプラス材料です。

しかし、物価上昇にはまだ追いついていません。

つまり、企業年金や退職金だけに頼る老後設計は危険です。

会社が用意してくれる制度を確認しつつ、自分でもNISAやiDeCo、企業型DCを活用して、物価に負けない資産形成をしていく必要があります。

会社員の資産形成は、派手な投資で一発逆転を狙うものではありません。

毎月の給料から少しずつ積み立てる。
会社の制度をきちんと活用する。
退職金や企業年金も含めて全体像を見る。
そして、物価上昇に負けないように長期で運用する。

これが、これからの会社員に必要な考え方だと思います。

金利上昇によって、会社員の老後資産の環境は少し変わり始めました。

でも、最終的に自分の生活を守るのは、自分の準備です。

企業年金が増えるかもしれない。

でも、それに頼り切らない。

これからの資産形成は、「会社任せ」ではなく、「会社の制度を使いながら、自分でも備える」時代に入っているのだと思います。