中国EV大手のBYDが、ついに日本の「軽自動車市場」に本格参入しました。

その名もBYD RACCO(ラッコ)

以前からこのブログでも気になっていたクルマなのですが、今回YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」の川口まなぶさんによる公道試乗レビューを見て、ちょっと印象が変わりました。

「中国メーカーが日本向けに作った軽EVでしょ?」

くらいに考えていたのですが、どうやらそんな簡単なクルマではなさそうです。

特に驚いたのが、

静粛性・乗り心地・低重心による安定感。

価格まで考えると、日本メーカーにとってかなり手強いライバルになる可能性があります。

今回は公道試乗レビューの内容を参考にしながら、サラリーマン目線・クルマ好き目線でBYDラッコについて考えてみます。


BYDラッコは「日本専用」に近い軽EV

まず面白いのが、BYDが軽自動車という日本独自の市場に真正面から挑んできたことです。

ラッコは、N-BOXなど日本で人気の「スーパーハイトワゴン」に近いスタイルを採用しています。

つまりBYDが、

「世界で売っているEVをそのまま日本に持ってきました」

というクルマではありません。

日本人が軽自動車をどのように使っているのかをかなり研究したうえで開発されたことがうかがえます。

今回試乗されていたのは最上位グレードの**「300 Premium」**。

主なスペックは、

・最高出力:64馬力
・最大トルク:160Nm
・バッテリー容量:35.8kWh
・航続距離:320km
・車両重量:1160kg
・タイヤ:165/65R15

となっています。

軽自動車なので最高出力は64馬力ですが、注目したいのは160Nmというトルクです。

モーターはアクセルを踏んだ瞬間から大きなトルクを出せるため、街中での発進や中間加速ではかなり余裕がありそうです。


一番驚いたのは「静かさ」

今回の試乗レビューを見ていて、特に評価されていたのが静粛性でした。

EVなのでエンジン音がないのは当然なのですが、EVは必ずしも「静かなクルマ」になるわけではありません。

エンジン音が消えることで、

タイヤから伝わってくるロードノイズや、風切り音などが逆に目立つこともあります。

ところがラッコは、荒れた路面を走ってもロードノイズがかなり抑えられているとのこと。

これは個人的にもかなり気になります。

軽自動車の場合、高速道路などを走るとどうしてもエンジン音やロードノイズが大きくなり、

「やっぱり軽自動車だな」

と感じる瞬間があります。

そこをEVの静粛性によって一気に改善できるのであれば、ラッコの大きな武器になるでしょう。


スーパーハイトワゴンなのに安定感が高い

もう一つ面白かったのが、走行時の安定感です。

N-BOXをはじめとするスーパーハイトワゴンは室内が広い一方で、車高が高いためカーブなどではどうしても車体の揺れを感じやすくなります。

ところがラッコの場合、重たいバッテリーを床下に配置しています。

そのため重心がかなり低い。

背の高い軽自動車なのに、カーブではしなやかにロールしながら安定して走れるようです。

これはEVとスーパーハイトワゴンの意外な相性の良さなのかもしれません。

バッテリーが重いことはEVの弱点として語られることが多いですが、

低い位置に重量物を置けることは、走行安定性ではむしろメリットになります。


スポーツモードは軽自動車とは思えない加速?

ラッコには、

「ノーマル」
「スポーツ」
「エコ」

という3つのドライブモードがあります。

普段使いならノーマルで十分そうですが、面白いのがスポーツモード。

試乗ではアクセルを強く踏み込むとタイヤがホイールスピンするほど力強い加速を見せています。

特に中間加速がかなり強いようです。

高速道路への合流や追い越しなどでは、このモーターのトルクがかなり効いてきそうです。

一方でエコモードにすると出力特性が穏やかになり、街中をゆったり走るのに向いた設定になります。

家族を乗せて走るなら、個人的にはエコかノーマルで十分でしょう。


回生ブレーキも2段階で変更できる

EVらしく、回生ブレーキの強さも変更できます。

「スタンダード」と「ハイ」の2段階。

ハイにするとアクセルを戻したときの減速が強くなります。

EVに慣れてくると、この回生ブレーキが結構便利なんですよね。

アクセルのオン・オフだけで速度を調整しやすくなるので、街中ではブレーキを踏む回数を減らせます。

好みに応じて変更できるのは嬉しいポイントです。


運転支援もしっかり搭載

ラッコにはアダプティブクルーズコントロール(ACC)などの運転支援機能も搭載されています。

前方のクルマを認識して追従し、緩やかなカーブではステアリング操作もサポート。

軽自動車だから装備を削るという考え方ではなく、

EV+充実装備+軽自動車

というパッケージで勝負しているのがラッコの特徴だと思います。


N-BOXなどのガソリン軽とは何が違う?

ここが一番気になるところです。

日本にはN-BOXを筆頭に、とんでもなく完成度の高い軽自動車があります。

室内空間、使い勝手、燃費、信頼性、販売店網。

このあたりは日本メーカーが長年積み重ねてきた強みです。

ただ、「走りの質」という部分ではEVにかなりメリットがあります。

エンジンの振動がない。

加速が滑らか。

低速からトルクがある。

バッテリーによって低重心になる。

そして静か。

その結果、

「軽自動車に乗っている感じがしない軽自動車」

を作りやすいんですよね。

これはBYDラッコのかなり大きな武器だと思います。


日産サクラとも方向性が違う

日本の軽EVといえば、やはり日産サクラです。

サクラも軽自動車とは思えない加速感が大きな魅力です。

ただ今回のレビューを見る限り、ラッコは少し方向性が違います。

サクラが、

「軽EVだけど走りが力強い!」

というクルマだとすれば、ラッコは、

「軽EVなのに静かで乗り心地が良く、上質」

という方向。

しかもラッコはスーパーハイト系なので、ファミリーカーとしての使い勝手まで狙っています。

ここは非常に面白いところです。


そして価格が249万7,000円

そして僕が一番「これは怖いな」と思ったのが価格です。

最上位グレード「300 Premium」で、

249万7,000円。

動画ではEV補助金を約15万円として、実質235万円程度になると紹介されています。

もちろん補助金は条件や時期によって変わるため、購入時には最新情報を確認する必要があります。

それでも200万円台中盤。

最近のN-BOXなどのスーパーハイト系軽自動車も、ターボや安全装備、オプションなどを付けていくと200万円を大きく超えるケースがあります。

そこに、

EVの静粛性、
160Nmのトルク、
320kmの航続距離、
充実した運転支援、
低重心による走行安定性、

まで付いてくる。

価格だけを見ると、

「中国製だから安い」

という単純な話ではなく、

「同じ価格帯で装備と走りをかなり盛ってきた」

という印象です。


もんよし目線:日本メーカーは結構危機感を持ったほうがいいかも

僕が今回のラッコを見て感じたのは、

「BYD、本当に日本の軽自動車を研究してきたんだな」

ということです。

日本では軽自動車が生活に完全に根付いています。

N-BOX、スペーシア、タントなど、日本メーカーには圧倒的なノウハウがあります。

そのため海外メーカーが簡単に入ってこられる市場ではないと思っていました。

しかしBYDは真正面からそこに挑んできました。

しかも単に価格を安くするのではなく、

EVだからこそできる静粛性や低重心、モーターの力強さを使って、日本のガソリン軽とは違う価値を作ろうとしている。

ここが面白いです。

もちろん実際に購入するとなれば、

ディーラー網、
整備体制、
リセールバリュー、
長期的なバッテリー耐久性、
故障時の対応、

など、日本メーカーに分がある部分はまだまだあります。

クルマはスマートフォンのように「スペックが良ければOK」という商品ではありません。

10年近く乗る人も多いですからね。

それでも、ラッコの商品力が高ければ日本メーカーも無視できません。


BYDラッコが売れたら「軽自動車のEV化」が一気に進むかもしれない

個人的に注目したいのは、ラッコが何台売れるかだけではありません。

ラッコの登場によって、日本メーカーがどう動くのか?

こちらのほうが重要だと思っています。

中国メーカーが、

「250万円前後で、航続距離300kmクラスのスーパーハイト軽EV」

を本格的に販売してきた。

そして、それがもし日本で売れ始めたらどうなるでしょう。

ホンダ、日産、三菱、スズキ、ダイハツなども当然対抗してきます。

そうなれば、

バッテリー価格の低下、
軽EVの航続距離向上、
充電性能の改善、
EV向け装備の充実、

といった競争が一気に進む可能性があります。

消費者からすれば、競争相手が増えること自体は悪いことではありません。

むしろ歓迎すべきでしょう。


まとめ:ラッコは「安い中国EV」で片付けられない

今回の公道試乗レビューを見て、BYDラッコに対する印象はかなり変わりました。

特に、

・静粛性が高い・乗り心地が良い・低重心で安定している・モーターのトルクが強い・航続距離320km・運転支援が充実・最上位モデルでも約250万円

という商品力はかなり魅力的です。

もちろん日本で本当に評価されるかどうかはこれからです。

販売店や整備体制、リセール、耐久性など、実際に数年間売られてみないと分からない部分もあります。

それでも、

「中国メーカーが日本の軽自動車市場に参入した」

というだけで終わらせるには、ラッコは少し完成度が高すぎる気がします。

N-BOXなどのガソリン軽、そして日産サクラなどの軽EVにとっても、かなり面白いライバルが登場しました。

個人的には、BYDラッコそのもの以上に、

「ラッコ登場後、日本メーカーがどんな軽EVを出してくるのか?」

に注目しています。

軽自動車のEV競争、ここから一気に面白くなってきそうです。


参考動画

YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」
川口まなぶ氏
「BYD 新型RACCO 公道初試乗レビュー」

※本記事は上記動画の試乗レビューを参考に、筆者の考察・意見を加えて独自に構成しています。